コロナ(COVID-19)事情と空間除菌・空間洗浄

新型コロナウイルス感染症COVID-19(SARS-CoV-2)は全世界で猛威を奮っており、日本でも飲食店、娯楽施設、各種イベント、通常業務に影響を及ぼし続けています。

世界の状況

感染者数は1億人を突破し、死者の数は250万人を超えています。
特に感染者数の多い地域は欧州、北米、中南米で、死者の数は200万人を超えています。
米国における累計死者数が顕著で、全体の25%近くを占めています。

日本の状況

日本を見てみましょう。
執筆時現在、総感染者数は40万人を突破、死者の数は7000人オーバーとなっています。

実は感染症は相当に抑えられている

この数字だけを見て、インフルエンザの死者に比べると大した事はない、という方がいらっしゃるのですがそれは大きな間違いです。
インフルエンザの年間死者数は厚生労働省の発表によると例年1万人程度になっています。
これはインフルエンザに感染したことによって自分の罹患している慢性疾患が悪化して死亡されたもので、超過死亡概念といいます。
直接インフルエンザによって死亡した人は3225人となっています(2018年)。

更に、COVID-19の感染者数、死者数は全国的に徹底された対策状態における数です。
その成果は素晴らしいもので、2021年1月におけるインフルエンザ感染者数は過去5年における平均値と比較して0.1%に抑えられています

JIMIRI:医療情報総合研究所調べ

このまま推移すれば、執筆時現在、インフルエンザの流行は一切起きず終焉するだろうと言われています。

毎年必ず流行する感染症がここまで抑えられている状態においても、連日1000人を超える感染者の発生するCOVID-19がいかに強力なウイルスであるか分かると思います。

分かってきた新型コロナウイルス

謎の新ウイルスと言われたCOVID-19ですが、世界中の医療機関、大学、研究所が研究を行い様々なことがわかってきました。

まずは過去に重症肺炎を起こしてきたSARS(2002年〜)やMERS(2012年〜)とは異なるウイルスである。

細胞へ侵入する際、ACE2(アンテジオテンシン変換酵素2)への結合親和性が大きく強化されている等です。

特に後者は高齢者や心疾患のある患者ではACE2の発現が高くなるため、重症化リスクが高いと言われる理由の一つでもあります。

ACE2は血管に主として発現する為、血管の多い肺や心臓等にダメージを与えるとされています。

COVID-19は飛沫感染を主とした感染症ですから、まず呼吸器、肺がやられてしまうのはこの為でもあります。

エアロゾル感染が主な感染ルートと分かってきた

また、以前まではCOVID-19の感染経路はエアロゾル感染(飛沫感染、飛沫核感染)、接触感染と言われてきました。
しかしそのうちの一つが少々異なるのではないかという発表がありました。

英国の権威的科学的雑誌であるnatureの最新の発表によると、接触感染(汚染されたものを触れた指で顔をなどを触ることで感染するタイプ)は主たる感染源ではないというのです。

参考文献

他にも、米国疾病予防センター(CDC)も2020年5月の時点で表面感染に関するガイダンスを明確にし、このルートは「ウイルスが広がる主な方法ではない」と述べています。

参考文献

2020年5月ごろまでは、WHO(世界保健機構)と世界中の保健機構は、通常のコミュニティ環境(家、バス、学校、お店、会社など)の特に頻繁に触れる表面を掃除して消毒を推奨していました。

表面感染がこれまで非常に警戒されてきたのは、物体表面におけるウイルスの生存時間によるものです。

2020年の4月のある調査によれば、ウイルスはプラスチックやステンレス鋼表面などで6日間感染力を保持し続け、紙幣では3日間、サージカルマスクでは少なくとも7日間、皮膚表面では4日間程度感染力を保持し続けているとされました。

しかしこの実験は膨大な量のウイルスを用いた実験であり、現実の世界では遭遇することはありえないとニュージャージー医科大学微生物学のゴールドマン氏は述べています。

また、多くの実験、検査において、COVID-19のRNAが大量に発見されたとの発表がされましたが、ウイルスのRNAとはウイルスの死体に相当する、とゴールドマン氏は述べています。

しかし表面感染に油断してはいけない

表面の掃除、消毒が不要かと言われればそうではありません。それは表面感染がゼロだからではないからです。

事実、SARSはカーペットから大量のウイルスRNAが見つかっており、人が踏む事でそれが空気中に撒き散らされ香港のホテルにてエピデミック(限られた範囲での感染拡大)が起きた、とWHOと香港政府が発表しています。

また、中国当局はドイツから輸入した冷凍豚肉の梱包を扱った際、北港市天津の労働者が感染したという報告もありますし、鼻をかんだティッシュに触れたエレベーターのボタンに触れた指で食事をした事で感染した、という報告もあります。

人が行動する限り、物体表面のウイルスは不活性化したり新たに付着したりするのは避けられないため、定期的な掃除、消毒は欠かせません。

主とした感染ルートはエアロゾル感染ではありますが、表面感染は決して軽視してはいけない訳です。

結局空間中のウイルスはどうすれば良いのか

これはもう換気が一番です。

実際、WHOも厚生労働省も定期的な換気を推奨しています。

冬場は飽和水蒸気量が低下するため乾燥しやすくエアロゾルが長時間ウイルスが空間中に浮遊しやすいですし、寒い外気を取り入れたくない為定期的な換気を嫌がる人も多いですが、これが大切です。

空間中のウイルスを劇的に減少させる事ができます。空気が動き続けている事が大切です。

空間除菌について

では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のエアロゾル感染は、どう予防すれば良いのでしょうか。

表面感染が主たる感染ルートではない為、空間中のウイルスを減らすことが重要と分かりました。

一番大切なのは換気をする事で、消毒薬等を空気中に噴霧し続けてはいけません。

これはWHOも「消毒剤を人体に対しての空間噴霧はいかなる状況であっても推奨されない」と書いていますし、厚生労働省もこれを引用しています。

参考文献

二酸化塩素を使った空間除菌はしてはいけない

空間除菌を謳う商品に二酸化塩素を使ったものがありますが、国立病院機構仙台医療センターは身体装着型二酸化塩素放散製剤にはメーカーの標榜するような病原体抑制効果はなかったと報告しています。

労働安全衛生法では「名称等を通知すべき危険物及び有害物」のひとつして指定されています。

屋内における使用は、米国では1日8時間暴露で0.1ppmを暴露限界として設定しており、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)も別の条件下における暴露限界を設定しています。

これらの基準値は一般家庭ではなく、工場などでの成人の職業性暴露を念頭に設定された値であることを注意しなければなりません。

また、独立行政法人国民生活センターによると、ラットの吸入によるよる急性毒性を表す半数致死濃度(LC50)は塩素よりも低濃度であり、二酸化塩素の方が塩素よりも毒性が強いと考えられています。

更に、塩素も二酸化塩素も細胞を侵します。

特に粘膜が露骨ですが、粘膜細胞表面を傷つけます。
低濃度を飲んでしまう事は特に問題はありませんが(胃は元々消化に塩酸とペプシンが主成分である胃酸が出る為)、気管支などの粘膜には殺菌作用が認められる濃度は有害である可能性があります。

喘息の持病がある人、気管支が弱い人間は空間除菌剤を使用すべきではないでしょう。

紫外線による空間除菌は皮膚ガンや失明、物品の劣化に繋がる

紫外線による空間除菌はどうでしょうか。

確かに強力な紫外線による空気中の細菌、ウイルスの減少は確かに強力なものです。
実際、滅菌状態を維持しなければならない研究室やキッチン等においては人がいない状態で滅菌目的で使用されることがあります。
学校の給食室などで人がいない時など、紫色の電灯(殺菌灯)が点灯しているのを見た人もいるのではないでしょうか。

しかし、強力な紫外線は人体にとって有害なものです。
強力な紫外線は皮膚癌の原因となりますし、失明の危険性もあります。
足元のウイルス不活性を狙い、テーブル下に強力な殺菌灯を設置した店舗にて、露出した脚に皮膚火傷をおってしまった、といったニュースを目にした方もいらっしゃると思います。

更に、強力な紫外線は紙や布を強烈に劣化させます。
白い紙や布が黄色く変色してしまったり、色褪せてしまったりしますが、あれは主に紫外線が原因です。

殺菌作用、ウイルスの不活性作用があるからといって安易に空間除菌を行ってはいけない、ということです。
ゴールドマンの論文によれば、空間中のウイルスは1〜6時間で失活しますから、空間除菌そのものが疑問です。

マスクは公共の場で必須

マスクをつける事で感染者はウイルスを飛散飛散させる確率を減らし、また吸い込んでしまうリスクを減らします。

マスクのタイプも重要なので気をつけましょう。
理化学研究所、豊橋技術科学大、神戸大のスーパーコンピューター富嶽によるシミュレーションによると、マウスガードは吐き出し飛沫量を10%しかカット出来ず、フェイスシールドも20%しかカット出来ません。

また、この2つはエアロゾルを防ぐ効果は一切ないとされています。

吐き出し飛沫量、吸い込み飛沫量共に高確率でカットするのは不織布のマスクです。
出来れば不織布のマスクを着用するようにすると良いでしょう。

他にも出来る事、そして心がけたい事

先述しましたが表面感染を減らすために定期的な掃除や消毒を行い、空間中に再度感染力を持ったウイルスが飛散しないよう務める事も重要です。
除菌、ウイルスの不活性化の効果を長期的に発揮出来る薬剤の塗布等も有効でしょう。

最後に、接触感染は主たる感染ルートではないとはいえ、定期的なうがい手洗いは非常に重要です。

新型コロナのような世界規模で人々に苦しみをもたらす感染症の終焉には、一人一人の意識がとても大切です。
そこには個人も企業もありません。
苦しむ人を減らす為に出来ることを積み重ねていきましょう。