COVID-19と空気清浄機の効果について

新型コロナウイルスの対策として、換気が非常に重要である事は認識されています。
しかし、寒い冬は換気がなかなかし辛く、また花粉の季節では換気が非常に厳しい状況です。

そんな中、普段は空気清浄機を使用しているご家庭が多いと思われますが空気清浄機にウイルスを不活性化する性能はあるのでしょうか。

空気清浄機で新型コロナは防げるのか

一部メディアの過剰な期待による報道によって、空気清浄機は新型コロナに対し非常に効果的であるといった報道がなされています。
確かに、実験室レベルでの確認では新型コロナに対し、効果的である旨が確認されています。
しかしこれは現実にはありえない状況での実験で、厚生労働省、メーカーも過度な期待はしないで欲しいと発表しています。

また、薬品を使用するタイプの空気清浄機はWHO(世界保険機構)の推奨しない使用方法、濃度であったり、効果が確認されていないません。
そもそも、薬品での空間消毒をWHOは推奨しておらず、厚生労働省もこれにならっています。

空間除菌の重要性

英国権威的科学雑誌であるnatureの発表によると、新型コロナにおける殆どの感染経路はエアロゾル感染(飛沫感染、飛沫核感染)であり、空気中のウイルスの数を如何に減らすかが命題であるとしています。

日本の乾燥する冬はインフルエンザウイルス、コロナウイルスにとって繁殖する格好の環境であり、よってその対策として空間中のウイルスの絶対数を減らすのは防疫的観点からしても非常に重要です。

特に近年の冷暖房効率を上げる為の機密性の高い建築物は、クラスターとなりうる格好の場所と言えます。

よって、空間除菌は非常に重要であり、日本では最早完全に根付いたといえます。
空気清浄機に除菌能力、ウイルスの不活性化を期待する人も多いことでしょう。

空気清浄機で除菌できるのか

先述しましたが、一部空気清浄機において、コロナウイルスの不活性化、殺菌的作用が確認されました。

しかし、実験における状況は一般的な家庭、企業などの状況とは遠くかけ離れたものであり、メーカー、厚生労働省も確実なものでは無いとしています。

空間除菌効果を謳った空気清浄機の効果はなんともいえない

メーカーは北里研究所に依頼し、コロナウイルスに対し不活性化効果が期待出来るか確認しました。

確かにコロナウイルスに対し、エンベローブを破壊しウイルスを不活性化することが出来るとし、これは新型コロナウイルスに対しても同様であると発表しました。

しかしこれが、1立方メートル四方の箱に空気清浄機を入れ、24時間の強力運転によって確認されたものです。

メーカーはこれに対し、この実証は付着したウイルスに対する効果を確認したものではなく、空気中に浮遊するウイルスにたいする効果を確認した、あくまでプラズマクラスター技術の検証であるとしています。
また、希望は感じて欲しいが、過度の期待は禁物とであるともしています。

絶対NG。次亜塩素酸ナトリウムと空気清浄機の相性は最悪

次亜塩素酸ナトリウムの使用における空間除菌は基本的に禁忌とされており、これを空気清浄機に組み合わせは言語道断です。

WHO(世界保健機関)は、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を含む消毒剤を空間に噴霧した際に殺菌効果は得られず、肉体的、精神的に有害だと報告しています。

また、医学的には呼吸器への刺激が生じ、長期曝露、反復曝露は全身毒性の障害のおそれがあるとされています。
急性毒性もあり、新型コロナウイルスの流行に伴い、漂白剤水溶液を加湿器に入れて噴霧したための事故も起きています。
化学熱傷や失明のおそれもあるとしています。

以前、次亜塩素酸ナトリウムを主原料としたものを空間洗浄剤として販売したメーカーがあり、これは主に首から提げて使用するタイプでしたが汗と反応し首に化学熱傷をおうといった事件もおきており、消費者庁は使用中止を呼びかけました。

水道水では殺菌消毒のために次亜塩素酸ナトリウムを使用しているじゃないか、という方もいらっしゃるでしょう。

その点に関しては特に問題はなく、人間の口、食道、胃の粘膜にはほとんど影響がありません。これは元々人間の胃では消化のために塩酸とペプシンを主とした胃酸が使われているからです。

また、水道水で使用される塩素濃度は厳格に定められており、東京都水道局では残留塩素濃度を水道法で定められている0.1mg/L以上、水質管理目標設定項目の目標値である1mg/L以下を蛇口において常に確保できるよう管理しています。

これはWHOの飲料水水質ガイドライン値である5mg/L以下であり、またこの値(5mg/L)は生涯にわたり水を飲んでも人の健康に影響が生じない濃度を表しています。

話は少しそれましたが、日本の水は、世界的に見ても非常に清潔で安全な水と言えるでしょう。
水道水に使っているから安全、だから空気清浄機にも使って良い、という訳ではないのです。

次亜塩素酸を使った空気清浄機は無意味

次亜塩素酸は新型コロナウイルスによる感染拡大の影響を受け、消毒用アルコールが手に入りづらくなった為、家庭や職場などでアルコール以外による消毒を行うために経済産業省の要請を受けたNITE(独立行政法人製品業化技術基盤機構)が消毒方法の有効性評価を進めました。

その結果、新型コロナウイルスに対する消毒方法として有効と判断されましたが、その有効塩素濃度は35ppm以上の次亜塩素酸水です。

しかし、経済産業省は次亜塩素酸水に関しては次亜塩素酸水の手指等の皮膚への影響、空間噴霧のに対する有効性や安全性は評価されていないとしています。

特に空間洗浄目的の空間噴霧は先述したようにWHOも厚生労働省も推奨していませんから、避けるべきです。

また、次亜塩素酸による殺菌を謳った空気清浄機が発表されていますが、メーカー発表によると環境基準より低い濃度(0.01ppm未満)の気体状次亜塩素酸として放出していると記載されており、NITEの判断した35ppmに対して僅か0.0285%程度の濃度でしかなく、消毒能力は全くないと判断出来ます。

余談ですが、次亜塩素酸水を利用する際は、手垢や油脂などの汚れをあらかじめ除去する(石鹸等を使い丁寧に洗う)、対象物に対して十分な量を使用が求められます。

とにかく使っておけば良いというものではありませんので、注意が必要です。

以上のことから、空気清浄機を使った除菌、ウイルスの不活性化は期待してはいけないと言えるでしょう。

空気清浄機を使う場合は組み合わせ技が重要

空気清浄機は確かに空気中のホコリや花粉などをフィルタで受け止め、空間を清潔にしますがウイルス対策として使用するのであれば不十分です。

ではどうすれば良いのでしょうか。

加湿器と組み合わせて使用しよう

昔から言われていますが、乾燥する時期の加湿は非常に有効です。

冬季に流行性感冒(コロナ)やインフルエンザが流行する主な原因は乾燥で、空間中のウイルスが漂い続けやすくなってしまう事、また口や鼻、喉の粘膜が乾燥することでウイルスが直接細胞に感染しやすくなります。

つまり、加湿器と空気清浄機の組み合わせ試用により、エアロゾル感染の軽減が期待できるのです。

夏から秋にかけ、ある程度落ち着いていた新型コロナウイルスの新規感染者数が、日本の乾燥する冬になった途端爆発的に増加した事からも、分かる事だと思います。

空気清浄機付属の加湿器は加熱式・ハイブリッド式を選ぼう。

空気清浄機と同時に使う、加湿器の選び方ですが、少々気をつけなければいけない点があります。
加湿器には主に2つのタイプがあり、加熱式と超音波式があり、それぞれ特徴があります。

加熱式は文字通りお湯を沸かし水蒸気を作り出し、加湿します。
加熱に時間がかかり、また電力を多く使用することからある程度電気代がかかってしまいます。

超音波式は発信機を超高速で振動させ、その振動が水の表面で弾けて微小な水滴を発生させます。
スイッチを入れればすぐに加湿でき、また電気代も安いのが特徴です。

さて、これだけ見ると超音波式の方が良いと思われがちなのですが、実は超音波式には問題点があります。
それは超音波式加湿器そのものが感染源になってしまう点です。
加熱式加湿器は水を沸騰させ、殺菌した上で加湿出来ますから問題無いのですが、超音波式は水をそのまま細かくして空気中に放出します。
これによる健康被害は数多く報告されていて、レジオネラ菌、カビなどが大きな問題となりました。

レジオネラ菌はエアコンや水場などで発生しやすく、エアロゾル感染しやすいと言われています。重度の肺炎を引き起こす在郷軍人病(レジオネラ肺炎)やポンティアック熱などを引き起こし、集団感染しやすいのも特徴です。

また、カビの胞子をばら撒きやすいのも問題点で、超音波式加湿器は毎日の清掃が欠かせません。

更に悪いことに、その毎日の清掃が健康被害を引き起こした例もあります。
これは韓国で起きた事件ですが、加湿器用の消毒剤によって肺損傷や死亡する人が続出しました。

加湿器を使う際には多少電気代はかかっても、加熱式を使う方が無難でしょう。

また、空気清浄機と加湿器を組み合わせたものも販売されており、気化式加湿器やハイブリッド式加湿器(加熱気化式加湿器)といったものもあります。
前者は水を吸ったフィルタに風を当てて加湿するタイプなのですが絶対的に加湿能力が低く、また20℃以下では殆ど過失出来ません。また、フィルタの洗浄は面倒です。
フィルタを洗浄しないと、カビや雑菌の温床となってしまいます。

それを改良したものがハイブリッド式加湿器です。
ヒーターで加熱した風をフィルタに当て加湿能力がアップしています。

これらの2つのタイプは水やフィルタが汚染されているとやはり感染源となってしまうため、こまめなメンテナンスが欠かせません。
空気清浄機と加湿器の組み合わさった商品を買う際には、それぞれが独立したものを購入する点を考えておくと、トラブルを避けやすいと思われます。

空気清浄機は換気の補助で使うようにしよう

空気清浄機は確かに空気中のホコリなどを綺麗にしてくれます。
しかし、万が一その場に感染者がいた場合はウイルスの除去能力は加湿器などと組み合わせても完璧ではありません。
あくまで補助的なものとして考えるようにしましょう。

換気は絶対必須。空気清浄機は換気時の花粉症対策などに使うようにしよう

どれだけ空気清浄機を使用し、また除湿をしても空間中のウイルスを劇的に減らすことは出来ません。
WHO、厚生労働省も推奨しているとおり、定期的な換気がやはり非常に大切で、寒かったり暑かったりしても、これを欠かしてはいけません。

出来れば、ドアや窓を少しあけ、常に空気の流れを作るように心がける事が大切です。
勿論、空気清浄機を換気と組み合わせて使う事にも意味はあります。
それは舞ってしまったホコリを減らし、換気をする事で部屋に入ってきてしまう花粉を減らし、ハウスダストを減らすなどにおいては十分能力を発揮します。

それぞれ、使い分けるようしましょう。

接触感染にも気をつけよう

空間中のウイルスの数を減らしても、飛沫等によって床やものがウイルスによって汚染されてしまっていては台無しです。
歩けばやはり舞い上がってしまいますし、手で触れれば顔を触ることで感染のリスクもあります。
定期的な清掃、消毒を心がけるのもお忘れなく。